十字路
中学生らしき3人が一緒に下校している。女子男子男子の3人で仲が良さそうに歩いてる。女子男子男子の家は各々バラバラなので、通学路の途中にある十字路でバイバイをして三方向に別れる。
今日もいつものように、男子が「じゃあまた明日。」と言うと、女子男子の男子が「オレ今日ちっと寄っていく所があるからこっちから帰る。」と女子男子の女子の家の方の道を指さす。
「おうそうか。じゃあまた。」と男子が言うと「おう。」と女子男子の男子が言う。女子男子の女子は何も言わない。
男子は一人いつものように道路脇の小石を蹴飛ばしながら帰ろうとして、数十メートル歩いてから何気なくうしろを振り返ると女子男子の後ろ姿が見えた。女子男子の男子が、女子男子の女子の手にそっと触れると、女子男子の女子がその手を握り返すのが遠目ながらに確認できた。
男子は胸のあたりがグイっと押し付けられて、耳の裏側辺りの体温が下がっていくのを感じた。ふと側道に目を落とすとそこにはくすんだ空色をしたアンバサの空き缶が転がっていた。
これは女子男子の初恋の話しであり、男子の初失恋の話しでもある。